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昔の話を残しておく。歴史ver.1

更新停止。コレ自体は残しておく。いわゆる、自分の歴史。

   
カテゴリー「科学」の記事一覧

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#8 【ナノ】小型化の限界点

パソコンの価格崩壊がすさまじい。こんなにも安くていいのかと思ってしまう。


さて、パソコンのCPUだが、昔の面影が感じられないほどに処理が速くなっている。みなさんは具体的に、どうして速いのか、考えたことはあるだろうか。

コア数が増えた?

うむ、それは間違いない。しかし、CPUそのもののサイズはほとんど変わっていない。つまりは、デュアルコアならば、コアの面積が単純に半分に収まっている、ということになる。これがCoreシリーズ、いや、Pentiumなんかにも通ずるIntelの手法だ。
結論から言うと、「チップを微細化することで、速度を向上させている」

ハイパースレッディングとかの話もあるが、ここでは論理回路ではなく、回路そのものを物理的にみてみようと思う。


重要になるのは、電流とは何か、という話だ。
もちろん、電流とは「電子の流れ」に相違ない。ということは、電子という"物質"が走っているわけだ。回路がつながっていても、うまく走ってくれない場合がある、と考えるのは妥当だろう。そもそも、ゴムをつなげても電流は流れない。

ではここで、単純明快な回路を考えてみよう。
「電池→豆電球→」でループするだけの回路を想像してみてくれ。
(時間がなくて、こんな図すら用意できません。気合で読んで。)
さて、この回路を2つ作る。
片方は、机の上で作れるサイズ。数値でいえば、30cm分の銅線を利用した。
もう一方は、極端に大きい。太陽から地球までの距離の分の銅線を利用した。
この両者のスイッチをONにしたとき、豆電球が光るまでに要する時間は等しいだろうか。

むろん、等しくない。小学校までなら同じことになってると思うが、中学以降なら物理の授業でやってるはずだ。電子にも速度がある。ということは、目的地までの距離が100倍ならば、所要時間も100倍になるはずだ。
このように、回路は短ければ短いほど、そのルーチンタイムは短くなる。
(当然、現実はここまで単純ではない)


要するに、小さければよいのだ。
こうして、CPUメーカー(特にIntel)は性能をメキメキとあげていくことになる。
「ムーアの法則」はここに誕生した。



しかし、大きな壁が次々と立ちはだかる。

まず一つ。「生産ラインの限界」だ。
それだけ小さいものを扱うときは、普通は専用の機械で丁寧に作るものだ。しかし、そんなことをしていては埒があかない。大量生産ラインを構築する必要がある。これが第一の関門だった。なにせ、前人未到の領域だったからだ。60nmアーキテクチャですら必死だったのに、とうとう40nmにまで精度があがることが要求された。
ただ、これはナノテクノロジーの技術革新が解決した。


しかしほっとしたのも束の間、次の問題がおこる。「表面反応」だ。
高校までの化学では、物質をマクロな系としてとらえる。つまり、ひとつの塊として扱っているのだ。これを「バルク」という。ただ、実際はその通りでない。高校でもその片鱗をうかがい知ることができる。不動態なんかは近いところにある。ある程度大きさを保っているうちは、全体の反応のうち、バルクとしての反応が帰するところが多い。けれども、小さくなればなるほど、表面反応の占める割合が無視できなくなってくる。具体的には、「電子のリーク」がある。電子は回路の表面において、勝手に漏れていってしまうのだ。
流す電流量を増やす、また、リークした電子が他回路に影響しないよう、配置に気をつけるなどで解決されると期待された。


ただ、ここでトドメがささる。
ついに、回路の小ささが限界点に達したのだ。
これが最大の難関。「原子の振る舞い」が人の手に負えなくなった。
Cu原子が横幅5つで構成された回路が存在する。これが今の限界。仮に、横幅が3つだとしよう。すると、機械も完全ではないから、どうしても横幅が2つになってしまったりする。このとき、電子はまともにその隙間を通過できない事象が発生する。あまり詳しくはないが、原子のもつ最外郭電子の相関的位置がよろしくないらしい。また、原子がふっと離れていってしまうこともある。はやいはなしが、量子力学の世界に突っ込んだ、ということだ。これが今の限界。
原子力も量子力学の分野に所属すると筆者は考えているが、やはり、今の科学では手に負えない領域らしい。

まぁ、それで物理的進化の打ち止めになって、論理的ハイパースピードシステムを考えなければならなくなった次第である。バンド帯を変更した、とか言ってたが、一般人たる筆者には理解に苦しむ点であった。というか、何より面白くない。講演聴いてて寝るかと思った。

現在、「表面反応」の分野はにわかに活気づいている。
期待したいと思う。









小型化には限界点が存在する。小型化、ということについて面白い問題がある。
解いてみて欲しい。

問)xy平面上において、全ての頂点が格子点である正五角形は存在しないことを証明せよ。


ヒント)汚い答案はさけるべし。小型化の考えがあれば、美しく解ける。具体的には、背理法を使う。






















略解)
全ての頂点が格子点である正五角形が存在する、と仮定する。
頂点のひとつに注目する。
自分と隣接する頂点に向かうベクトルを考えると、そのベクトルは格子点から始まって格子点に終着するもの、である。
自分と隣接する2頂点の3点を頂点とする平行四辺形を描く。
ベクトルが平行であるから、残りの1頂点は格子点上に存在する。
これを5つ全ての頂点について考えると、
格子点の正五角形の内側に、もう一つ格子点の正五角形が描かれることになる。
これを繰り返すと、格子点の正五角形の内側には無限の格子点が存在しなければならない。
このようなことは起こりえないから、~は存在しない、とわかる。

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#3 【原子力】原子炉

前回の反省。
・ふざけすぎた。そのために、読んでいて不快感を与える可能性がある。
・「後述」が多すぎる。専門書の読みにくさは認めるが、順番を変えても意味がなかった。
・画像作成に時間をかけすぎた。これは著しくモチベーションを下げてしまった。
・変なところで自論を展開してしまった。関連性が薄く、完全に蛇足であった。
今度から気をつけます。


前回のおさらい。
・化学反応における「反応熱」は、「質量欠損」に起因する。
・核分裂が起きると、反応生成物として「高速中性子」が複数個とびだす。
・核分裂の反応は確率で変動するため、様々な生成物ができる。
・原子炉を運転するためには、「臨界」状態でなければならない。


5.臨界状態を維持する

前回、「核分裂連鎖反応」について述べた。
もう一度内容を確認しておこう。

核分裂が起こり、生成物として中性子が飛び出す。
この中性子が別のウランに衝突することで、再び核分裂が起こる。
これを繰り返す。

※中性子が当たって核分裂を起こす物質はウラン235だけではない。今は関係ない話なので、無視して話をすすめる。

さて、前回も述べたように、飛び出す中性子は平均して2.4個。
臨界を維持するためには、飛び出す中性子が1個であってほしい。

ということは、飛び出した中性子のうち、1.4個を消してしまえばよい、ということだ。
これを可能にするのが「制御棒」。
制御棒とは、「中性子を吸収する物質を棒状にまとめたもの」である。

中性子を吸収するメカニズムはいたって簡単である。
中性子が衝突したとき、その原子が核分裂を起こさなければよいのだ。
言い換えれば、中性子を1つ奪って、0個の中性子を出した、とも言える。
先に注釈に書いたことの延長になるが、世の中には、中性子がぶつかった時、「核分裂するもの」と「核分裂しないもの」があるわけだ。
後者を用いれば、中性子の数を減らすことができる。

では、どのような物質が適しているか。
まず、「核分裂しない」というのが絶対条件だ。
次に求められるのは、「効率」。
つまり、どれだけ多くの中性子を吸収してくれるか、ということだ。
以下の図を参照してほしい。
バーン
原子は球体としてモデル化できる。
このとき、その断面積が大きければ大きいほど、より多くの中性子を吸収できるわけだ。
※なんか変だな、と思った貴方は正しい。本当は「吸収可能性が高い」のであって、でかけりゃいい、というモノでもなかったりする。
高3レベルになってしまうので、可能性の話はスルーさせていただく。
これを数値化したものが「バーン量(b)」だ。
「バーン」というのは、「熱中性子吸収断面積」のことをさす。
代表例をあげていこう。
炭素0.0034b、ストロンチウム0.14b、銀63b、ホウ素760b、ウラン7.7b、……
他に、天然のガドリニウムは46000bと、桁違いなものも存在する。

要は、このバーン量の大きい原子を制御棒として使えばよいわけだ。
そして第三に――もっとも、電力会社はここが大事なのだが――コストの問題がある。
どんなにバーン量が大きくとも、法外な値段をふっかけられるんじゃあ話にならない。
よって、原子炉の型、電力会社によって、制御棒の種類は異なっている。

ともかく、こういった原子を用いて制御棒を作り、それを原子炉内部に沈めることで、中性子を吸収するのだ。

ここでちょっと問題を出す。考えてみてくれ。
Q.近畿大学の所有する実験炉について。制御棒がもっとも深く原子炉内に進入しているのはいずれの時か。
1.出力0.01W
2.出力0.1W
3.出力1W

どうだろうか?1だと考えた人はいないだろうか。
「そんなもん、出力が低い方が多く中性子を吸収してるに決まってんだろ」という考え方はもちろん間違いである。
A.どれも同じ位置にあるため、解なし
出来た人、よく分かってますね。凄いや。

臨界の話をしましたね。
中性子が1個なら臨界、それを下回るなら臨界未満、上回るなら臨界超過。
臨界   は「出力維持」
臨界未満 は「出力低下」
臨界超過 は「出力上昇」
1.2.3.ともに、臨界状態なわけです。
ということは、どれも、2.4個の中性子のうち、1.4個を吸収してる状態です。
この割合は維持されています。
制御棒は深く挿せば挿すほど、中性子を吸収する割合が増加します。
割合が維持されている、ということは、制御棒の位置も維持されている、ということです。

制御棒、だいたい分かりましたかね?これで臨界を維持するんです。

6.中性子のエネルギー

核分裂の時に飛び出すのは「高速中性子」です。
でも、ウラン235を核分裂させる際には「熱中性子」が必要です。
この2つの違いを説明しましょう。

端的に言えば、
高速中性子……運動エネルギーが滅茶苦茶に高い。光速よりちょっと遅いぐらい。
熱中性子 ……運動エネルギーが低い。のろのろ進む。

たったコレだけなんです。
でも、結構大事なことなんですね。
どうして高速中性子じゃダメなの、という話は大学レベルになってしまうのでカットします。
ともかく、飛び出した高速中性子を熱中性子に変えない限り、連鎖反応は起きてくれません。
そのために、高速中性子を減速させなければなりません。
そこで用いられるのが「減速剤」です。
「減速剤」とは、「高速中性子の運動エネルギーを奪い、熱中性子に変える物質」です。
代表例として、黒鉛や軽水があります。

おはじきを想像するとよいでしょう。
指でパチンと弾いたとき、他のおはじきにあたって減速します。
これの原子バージョンなわけです。

さて、物理選択の方なら分かると思いますが、
ある物質をそれと同質量の物質にぶつけると、全ての運動エネルギーが授与される
という話は……大丈夫ですよね?
こういう事から分かるように、減速剤にも相性があります。
「中性子に近い重さである」「密度が高い」「コストがかからない」など。
そういった理由から、上に挙げた2つが用いられます。

※現在では、黒鉛は少なくなりました。軽水の方が便利だったから、です。事故を起こしたから、ではないですよ?そんなこと、ヤクザまがいの電力会社さんが考慮するはずもないですからね。

7.冷やす。

さて、当初に述べたとおり、原子力発電、というのは
「核分裂の反応熱をエネルギーとして取り出す」わけです。
まぁ、100人いたら98人は知ってますよね。
お湯を沸かします。

熱を電力に転換する方法として、一般に水蒸気圧を媒介する手法がとられています。
水を加熱して蒸気にし、そのスチームの圧力でタービンを回して発電します。

ということは、逆に言えば、熱を伝えてくれる物質が必要である、ということですよね。
これを「冷却材」といいます。
何故に冷却材、という言い方をするのかというと、原子炉内の熱を奪っているから、です。
これには軽水やナトリウムが用いられます。
が、詳しい話は原子炉の型によって大きく異なりますので、一概には説明できません。

8.原子炉の型

有名どころだけを集めてみました。

こちらはRBMK型です。
チェルノブイリ、と言えばわかりますかね。
注目すべき点を挙げます。
・冷却材は軽水で、直接タービンに送っている。
・減速剤として黒鉛を軽水とは別に扱っている。

※例の事故については、原子炉システム面の問題ではないのですよ。あの原発は特別だ、と言う人は工学系の人間ではないのでしょう。おそらく。


PWR型ですね。
ぷれっしゃーどうぉーたぁりあくたぁ、です。
日本語に直すと、加圧水型、です。
注目すべき点を挙げます。
・冷却材は軽水で、タービンを含む水の系とは分離している。
・減速剤として軽水を用いている。

※これは関電さんが使ってる奴ですね。安全性は東電の奴より高いですよ。間接型ですからね。ちなみに、原子炉を加圧するのは、水の沸点を上げるためですね。海底火山の温度がべらぼうに高いのと同じ原理です。


面倒だったので原子炉だけ書きました。
日本語では、沸騰水型、と言います。福島第一です。
注目すべき点を挙げます。
・冷却材は軽水で、直接タービンに送っている。
・減速剤として軽水を用いている。
・制御棒挿入方向が逆である。

※制御棒挿入方向が逆なのには理由があるんですが……これはシステム面に関係がないので、無視します。


他にも、韓国標準型原子炉など、さまざまな原子炉があります。

9.安全性

まずはチェルノブイリの失敗に学んでみましょう。

チェルノブイリ原発は、事故当時、実験中でした。
そのため、定格出力を下げていました。
大幅に定格出力を下げたため、キセノンの平衡が乱れ、キセノンの分量が増していきます。
実験開始の指示が遅かったこともあって、原子炉はキセノンオーバーライドの状態に達します。
キセノンは中性子を吸収してしまいますので、制御棒と同じ理屈で臨界未満になります。
そのマイナスを補うため、運転員は制御棒をほぼ全て引き上げてしまいます。
これにより、なんとか臨界を保ちます。
このような状況の中、実験――外部電源が動作していない、という設定――が開始。
給水ポンプが停止しますので、軽水がキレイに循環しなくなります。
自然対流に任せる形です。
そのため、原子炉内部に蒸気泡が多くなり、また、原子炉内部の水温が上昇します。
こうして水の密度が減少し、かつ、反応度が高くなります。
よって、水で減速することなく、黒鉛に高速中性子が到達。
この黒鉛は十分な量ありますので、全ての高速中性子を熱中性子に変えます。
軽水だけなら、密度が下がった時点で熱中性子も減るのですが、この場合は加速して止まらない状況です。
このような経緯で急激に出力が上昇、焦った運転員はスクラムを決行します。
スクラムとは、制御棒をいっせいに挿入することです。
このとき、制御棒のもつ空洞により水の密度はさらに減少。
制御棒を挿したにもかかわらず、逆に出力が増大します。
これをポジティブスクラムといいます。
そんな次第でさらに出力が増加。
発生する熱量も異常な域に達し、制御棒のガイドをゆがめます。
そのまま原子炉はメルトダウン。
急激に上昇した圧に耐え切れなくなり、水蒸気爆発。
漏れでた水素に引火して水素爆発。
※爆発については諸説あり。

説明なしで書きました。
制御棒を突っ込むのに2秒です、というなら話が別ですが……8秒もかかるようでは、同じ状況下で爆発しない、とは言い切れないんですよ。いける?

結局、チェルノブイリで学ぶべきポイントは「巨大システムの保安」という、機械工学の専門書ならどれにでも載ってるようなことなんですよ。
システムは巨大化すると、あらぬ過ちを引き起こすことがある。
よく言われる言葉です。
社会学でも似たような話ありますね。
「合成の誤謬」ってやつ。ちょっと違うかな。

めんどくさくなってきたから、ぶっちゃけちゃうと、
どんなシステムであれ、事故る時は事故る。
それだけなんすよ。


その上で、今の日本の原発の安全性について見てみる。

まぁ、BWRとPWRの比較になるんだけどね。

原子炉の配置
PWR・・・最下層に設置する。水がたまる場所に存在するわけだ。
BWR・・・空中に設置する。蓄圧プールの関係だ。ヒビが入ると、水は駄駄漏れになる。

制御棒の配置
PWR・・・上から。地震で折れても、水は漏れない。でも水素は漏れる。
BWR・・・下から。上からだと費用がかさむため。地震で折れると、全部もれる。

制御棒の種類
正直、安全性にはあまり影響なし。
ただし、BWRの方が細い。ポッキーを大きくした、みたいな。
対して、PWRは四角い。すげぇ長い直方体、みたいな。

燃料の種類
PWRもBWRも一緒。
ただし、福島第一の3号機ではプルサーマルを用いていた。
反応性が高く、暴走しやすいため、以前から危険性が告知されていた。
プルトニウム+サーマルリアクターの省略である。

給水ポンプ
どっちも大して変わらん。
関電については、データなし。
東電については、チリ津波の時、うまく作動していなかった事が発覚している。

燃料棒露出
PWR・・・よっぽどの大穴があかないと無理。地面に穴があくなら別だが。
BWR・・・タービンまでを含めた循環水系のどこか1箇所に穴があくと露出。

設置費用
PWR・・・システムが巨大化しがちな上、系が複数あるために割高。
BWR・・・単純明快なシステムのため、安上がり。


……なんか、こうしてみると、東電ってクズだよねぇ。
とは言うが、「もんじゅ」もアホよねぇ。
ナトリウム型の高速増殖炉、については各自で調べて欲しい。疲れた。
でも、中学生でも「冷却材がナトリウム」とか「燃料が増殖する」とか聞くとさ、「ヤバイんじゃね?」と考えると思うんだがなぁ。

どうでもいいことを最後に。
福島第一の水素爆発。
上部だけが吹き飛んだのは、そこに水素が溜まったから、ではないよ。
そこを弱く作ってあるから、です。
もんじゅを製作してるときに、海側の壁だけ薄く作る理由、とかで聞いたことがある。
万が一に爆発したとき、逃がすところを作っておかないといけないんだって。






もう眠いよー
最近、バイトを辞めたくなった自分がいます。
飽き性もここまで来ると重度だろうなぁ。
原子力も飽きちゃったしなぁ。

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#2 【原子力】 原子力の根本原理

不謹慎と知ってて言うが、
ちょうど今、原子力が旬の季節だ。
せっかく原子力を勉強したんだから、一本書かせてもらう。

※注意※ それなりに理系向けです。高一ぐらいかな?



1.原子力て何ぞや?

A)「原子力」ってどういう意味?

 「原子力」というのは、もともとは「Atomic Power」の訳語である。
しかし、そのメカニズムはこの英語からは程遠い。
よって、最近では「Nuclear Power」という表記が一般的だ。

例)原子力発電所
   昔:APP(Atomic Power Plant)
   今:NPP(Nuclear Power Plant)

 もっと厳密に言うなれば、「Nuclear Energy」とでも言うべきだろう。
(物理においてPowerは仕事率をさし、Forceは力量をさすため)
日本語に直すと、「原子核エネルギー」だ。

B)どういうメカニズムなの?

 単純化すれば、「核分裂の際に放出されるエネルギーを熱量として取り出す」、といえる。
細かい話は後日にまわすが、まずは"化学反応"という視点からみてみよう。
 カイロの反応は知っているだろうか?鉄と酸素と水。この3成分が反応して水酸化第二鉄を作るものだ。反応は以下の通り。

4 Fe + 6 H2O + 3 O2 → 4 Fe(OH)3
(水は多孔質であるバーミキュライトに含まれている。酸化還元反応を助長するため、食塩水を用いる。)

 何が言いたいか、というと「反応熱って馬鹿にならないじゃん?」という話だ。
高校でなされる説明においては、「高い結合エネルギーを持つものが、結合エネルギーの低い物質に変わる際に、過剰分のエネルギーが放出される」とかいわれる。
 で、カイロでは所詮、約800KJ/molぐらいで、ほんのり暖かい程度だ。
しかし、核分裂はダンチだ。ウランの例で言うと、だいたい200MeVぐらい。
……と、言われてもピンと来ないだろうが、練炭が燃える反応の約1千万倍(質量あたり)の熱量だ。
何が違うワケ、という話はまた今度。

核分裂の反応熱を利用している、という理解でいいはずだ。


2.核分裂とは何か

 端的に表現すると、「原子核が分裂する反応」だ。そのまんまである。
まぁ、説明に入る前に、これを見てくれ。
ウランちゃんうふふ
 これは核分裂の概略図だ。
ここでは、特にウラン235を取り上げている。ずばり、現在の原子炉で使われている燃料だ。
1.中性子がウランに衝突する。
2.ウランが約85%の確率で核分裂を起こす。
3.新しい原子が2つできる。


たったこれだけだが、注意すべき点もある。
一、高速中性子よりも熱中性子の方が反応率が高い。
一、生成する原子は確立で変動するが、だいたいは大小2つに分かれる。
一、高速中性子が飛び出すが、その数は一定でない。(平均して約2.4個)

 「高速……ナニ?」という貴方、今は「中性子にも個性がある」と思ってください。
さて、この図を見てお気づきの方も多いでしょうが、生成物に中性子が含まれていますね。
ここがミソです。以下の図を見てください。
chain reation
 このように、核分裂によって飛び出した中性子をまた別のウランに衝突させると、再び核分裂が発生します。
そして、その飛び出した中性子をまた別のウランに、という風に繰り返すことができれば、放っておいても反応が進行しますね。
これを「核分裂連鎖反応」といいます。
このための装置が「原子炉」なわけです。
 そして、もう一つ重要な事は、さっき申し上げたとおり、核分裂反応は莫大なエネルギーを放出します。
つまり、何もしないでも、東京一帯を賄えるだけのエネルギーをずーっと供給し続けてくれるのです。
何てステキなんでしょうか!!

これが原子力の根本的な原理なんです!

(でかい事言いましたが、日本の電力供給源の過半数を原発が占めています。)
(原発さまさま、って感じですね。でも、自分は原発賛成派ではありません。)









3.説明してないことがあるんじゃないか?おぉん?

 こっから先は理系色が強くなります。アレルギーの方はご注意ください。
補足的な説明なので、順番は割りとごっちゃです。ゴメンネ。


A)質量欠損

 原子力といえばこのジジイ、アインシュタイン。
彼は「E=mc^2」を提唱したことで有名であるが……これ、何やねん、という話だ。
よく使われる説明が「消しゴムぐらいの質量があったら地球がヤバイ」ってやつ。
聞いたことない?筆者のまわりだけなのかも。
 ここで相対性理論の話をする気はサラサラないし、筆者も説明できない。
よって、原子力に関係ある部分だけ話そう。

 義務教育を受けたなら誰でも知ってる超有名原理の一つ「質量保存の法則」。
これ、実はまったくもってウソっぱち。成立していないのである。
具体的に言うと、原子レベルの話になる。
そこで、まずはこの図を見てもらいたい。
atomic model
これぐらいは常識中の常識だ。
バーンについては原子炉の話になるまで待ってくれ。

ひとまず、確認しよう。
陽子の重さ ≒ 中性子の重さ ≒ 電子1840個分の重さ
中学の教科書に載っている範疇だ。
ニアリーイコールだと計算に支障が出るため、厳密に記しておく。

電子の質量……約9.10938188*10^-31
陽子の質量……約1.67262158*10^-27
中性子の質量…約1.67492716*10^-27
単位はいずれもkgである。(国立天文台)

 有名な話で、全ての元素の原子量は「炭素12(12C)が12uとなるように、相対的に定められている。
(uは原子質量単位Atomic Mass Unitである。これが1molあるとg換算になる。)

 計算してみよう。質量数が12で、原子番号は6だから、電子と陽子と中性子が6個ずつ入っている計算になる。それが1molあると12gになるわけだ。
(9.1094*10^-31 + 1.6726*10^-27 + 1.6749*10^-27)*6 *6.02214*10^23
実際に計算してみると、12.09875967492696gになる。
ぶっちゃけ、12.10gだ。
そう、ずれている
本来ならば12.10gのはずが、12.0gになる。論理に合わない!!

 これは「国立天文台がやらかした」とか「実は数のトリック」とかではない。
現実問題として、こういう風になっているのである。
この軽くなった分をさして「質量欠損(Mass Defect)」という。
 アボアジエ「うちゅうのほうそくがみだれる」
ということはなくて、単純に「質量保存の法則は成立していない」ということだ。
Mass Defect
 何でこないな事になっとんねーん、意味わからへんわー。
ここで登場するのがアインシュタイン。
つまり、「E=mc^2」の変換公式だ。厨二病諸君は歓喜にむせび泣いてよいタイミング。
物理学者が言うにはこういうことだ。
「結合エネルギーの分だけ質量が奪われた」「質量を結合エネルギーに転換した」
この説明ならば、熱力学第一法則「閉じた系の中ならば、エネルギーの総和は保存される」を満たす。
通称『エネルギー保存の法則』だ。かっこいいね。

さて、これを利用すれば、以下のような真似が可能になる。
Emc2
質量欠損の総和を増大させることによってエネルギーを取り出すのである!!
……何も難しいことはない。
一般的な発熱反応はこういう仕組みになっているのである。
これが「反応熱」なんだ。

 ウラを返せば、その差が大きければ、得られるエネルギーもデカくなる、ということだ。
さて、質量欠損を大きく変化させるための方法だが、これを世界中の研究者が躍起になって探し回った。そして超ウラン元素の研究が始まる。

 結論から言おう。
原子核の反応、すなわち「核分裂」と「核融合」がそれに該当するわけだ。
他の反応と比べて、その違いはダンチ。
随分前に述べたが、ウランの核分裂は練炭の1千万倍。
 具体的には、
ウラン235核分裂 の質量欠損変化量……ウラン全体の1/1000
練炭燃焼反応 の質量欠損変化量……練炭全体の1/10000000000

ダンチもダンチである。ダンチが団地かもしれない。
 とにもかくにも、この事実が発覚して以降、ウラン235の核分裂は物理界、産業界、そして何より、軍事界を賑わせたのである。


B)Nuclear Fission

 カッコイイ英語使っても、ただの「核分裂」のことである。
随分昔に、「確率」の話をしたはずだ。そこを説明する。
 どうにも核分裂というのは、確率の話と切っても切れないような縁がある。
具体的には、
 ・ぶつかる中性子のエネルギーによって核分裂する確立が異なる
 ・核分裂するにしても、生成物が確率で決まるため、ハッキリと決められない
など。
中性子の話は次項で扱うことにして、ここでは生成物の話をしよう。
気構えなくていい。先と比べるととっても簡単な話だ。
とりあえずこのグラフを見てくれ。これ、どう思う?
核分裂生成物
……すごく、汚いです……。
すまない、データに起こすのが面倒だったから写真で資料集を撮ってみたんだ。
許可?……これは教育のためだ、我慢してくれ。
 さて話を戻そう。これは、ウラン235を核分裂させた時の生成物の収量だ。
14MeV中性子では反応確率が著しく低いため、影響は微々たるものだ。
よって、「熱中性子」のグラフを見て欲しい。
 山と谷があるのは分かるだろうが、これが対数グラフである点に注意だ。
谷の底と山の頂上では実に600倍の差が開いている。
つまり、実質的には、谷の部分はゼロに近似しうるレベルだ。
 以上のことを踏まえると、自然、見えてくるものがある。
それが、えらいこと昔に述べた「大小2つに分かれる」というヤツだ。
数値で言えば、90付近や130付近に集中している
 聞いたことはないだろうか?
ストロンチウム90、キセノン135、サマリウム149、セシウム137、ヨウ素131……
こういった面子こそが「核分裂生成物」である。
特に、ストロンチウム90(90Sr)、セシウム137(137Cs)は「放射性降下物(fallout)」としてしばしば話題に上がる物質だ。
また、ヨウ素131は体内被曝の原因になり、サマリウム149は圧倒的な毒性を持ち、キセノン135はチェルノブイリ原発事故に一役買った存在だ。
軒並み、危険極まりない物質どもが並んでいる。
 ところで話は逸れるが、コバルト60(60Co)は放射性物質ではあるものの、核分裂生成物ではない。これについては原子炉の話の時に述べたい。

 ともかく、上記のグラフにあるように、核分裂生成物はバラバラであり、当然、その対策は困難を極める。口が裂けても「原発が安全」とは言えないわけである。


C)臨界(critical)

 日本語にしても英語にしても美しい言葉だ。
その一方で危険な臭いも漂ってくる……。まさに漢の中の漢!!!

 アホな話は措いておく。
それにつけても、「なんか臨界ってさ、ヤバイ状態なんじゃねーの?」という認識が一般的だろうと思う。かくいう筆者もそうであった。

 これは、大きな誤解である。
言ってしまえば、「臨界」とは、「普段、原子炉を運転している状態」と等しい。

図を用意していないので、文字で理解してもらいたい。
先ほど、「ウラン235の核分裂により、中性子は平均して2.4個飛び出す」と書いた。
だが、ちょっと待ってほしい。
次の段階でまた2.4個。さらに次で2.4個。また次で2.4個……。
こうなっていくと、
僅か8段階目で1100倍の出力になってしまう!!!!
こうなれば原子炉は暴走、メルトダウンするのが先か、水蒸気爆発が先か、どちらにせよ、最終的には木っ端微塵に消し飛ぶことになるだろう。

 かと言って、飛び出す中性子の数が1を下回ると、今度は逆に、出力がみるみるうちに低下する。最終的にはウンともスンとも言わなくなり、原子炉は停止。発電所なのに発電できない、なんて事態に陥る。

 ということは、飛び出す中性子の数がピッタリ1でなければならない
こんな便利な反応は存在しない。ということで、飛び出した中性子2.4個のうち、1.4個をやっつけてやらねばならない。そのために「制御棒」がある。これについては原子炉の項で扱う。
 ともかくも、核分裂連鎖反応が、常に1→1→1→1→……と、定格出力を維持している状態でなければ、原発は運転できない。
このように、連鎖反応が一定速度を保っている状態を「臨界(critical)」というのだ。

 連鎖が臨界に達していない状態を「臨界未満(subcritical)」といい、また、連鎖が臨界を越えている状態を「臨界超過(supercritical)」という。
原子炉を停止したいときは未満にすればいいし、原子炉をスタートさせたいときは超過にすればよい。
もちろん、超過のままにしておくと原子炉は大爆発だ。

 それにしたって、ピッタリ1に合わせ続けることが可能なのだろうか?
実のところ、不可能だ。そういうわけで、運転員がいつも微調整を行っている。
あんな放射線まみれの場所、長く居たいわけはなかろうに。

 もし運転員全員が突然ウンコに行きたくなったらどうする?
当然、何人かは漏らすしかない。目を離したすきに、原子炉は暴走しかねないからだ。
また、安易に出力を下げることもままならない。それは、「ポジティブスクラム」という原子炉に特徴的な現象なのだが……これは原子炉の項で扱う。



4.原子力に対する姿勢

ちょっと話が逸れるが、これだけは聞いてもらいたい。
原子力に100%安全なんてものは現時点で有り得ない。
しかし、現実問題として、原発はこの国の電力事情からすれば必要不可欠だ。
よって、「原発は廃止することができない状態にある」
これもまた、揺ぎ無い事実なのだ。

では、どうすればよいのか?

筆者の考える答えは、こうだ。
「危険性を正確に把握し、その上で、より安全性を高めるための努力を怠らない」

危険か、安全か、なんて単なる色分けに意味はない。
喩えるならば自動車のようなものだ。
自動車は100%安全だ、なんて一体誰が言えるというのか。
しかし、現実にこれほど便利な乗り物はない。
よって、教習所で危険性について学び、国家が常に啓蒙し続け、そして、ドライバー自身が責任を持って、安全な運転に努める。
自動車のメーカーは、今以上の安全性を求めて研究をやまない。

そんな姿勢が、きっと、原子力関係者には求められるのだろう。


【終わる】










稚拙な文章ではないか、と思います。
改良点やご不満な点があれば申しつけください。
おつかれさまでした。
ドライアイ対策をしようね。

原子炉の項を書く準備をします。数日お待ちください。

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プロフィール

HN:
mukasino
性別:
男性
職業:
学生
自己紹介:
「どうせ駄文」と言い訳するのは止めることにした。
最近気がついたことがある。どうやら俺は飽き性らしい。惰性が失われた瞬間に冷める。
もはや自己規律だけが頼りである。

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